低価格ソフトウェアを使用した
パーソナルコンピュータによる
三次元超音波画像作成の試み


鈴鹿医療科学大学医用工学部医用電子工学科学生
堀川 武士 (Takeshi Horikawa)
同 臨床工学科
吉田 純 (Atsushi Yoshida)
三重大学医学部産婦人科
杉山 隆 (Takashi Sugiyama)  豊田 長康 (Nagayasu Toyoda)


母性衛生 第43巻4号 575〜579頁 2002年


W.考察

 超音波診断装置は、手軽で無侵襲であり、実時間で観察できるという利点も多いことから、現在では胎児診断には無くてはならない装置となっている。妊婦の不安は育児不安、分娩に関する不安等、様々であるが、大きな不安の1つとして胎児状況に対する不安があげられる。また、出生前に自分の子の写真を希望する妊婦も多い。しかし、従来の二次元超音波画像では妊婦が胎児の状態を把握するのは容易なことではない。過去の文献においても、従来の二次元超音波法で胎児をイメージすることは妊婦にとっては困難なことが多く、画像を見てもなかなか理解しにくいと思われる(4,5)と報告されている。

 また、妊娠末期までに胎児形態異常の多くは断層法で診断することが可能であるが、三次元的に複雑な形態をしている部分の異常は断層法では把握しにくかったり見逃されたりしやすいとされており、三次元画像を用いれば断層法では診断が難しい胎児の顔、耳(位置や形態)、四肢、骨格の形態異常の診断や種々の形態異常の重症度把握に有用であるとの報告もある(1)。

 本研究のアンケートによる調査においても、二次元超音波画像と比較して三次元構築画像は直感的に理解しやすいことは明らかであった。胎児診断において三次元画像は、画像を妊婦や家族に提示することにより、状態をよりよく理解してもらうことが可能となるため有用性が高いと考えられる。

 過去の文献に、三次元超音波法は妊婦の胎児に対する肯定的感情や親近感を増すと同時に、妊娠や胎児に対する恐怖心を軽減し否定的感情を減少させることで母性の発現を促進し母児関係の発達に寄与することも示されている(4)。さらに、三次元画像を見た妊婦には胎児のために生活態度や生活習慣を改善しよう、といった心理変化が認められたとの報告もある(5)。

 このように三次元画像構築は、胎児状況や形態異常の重症度把握はもちろん、胎児の顔が立体的に表示されることによって医師と母親、家族の方とのコミュニケーションを取る手段としても役に立ち、母児関係の発達にも寄与することが報告されているため、臨床上の有用性も期待できると考えられる。

 現時点では三次元超音波装置は通常の診断装置の3倍以上もの価格であることや、検査時間が長くなる、探触子が重い、胎動や胎位によってはうまく抽出ができないなど、検査を受ける妊婦にとっての問題もいくつかあげられている(5)。

 今回の研究では、低価格な三次元画像構築ソフトウェアを使用し、パーソナルコンピュータ上での画像構築を試みた。超音波診断装置は三次元超音波診断装置でなく従来型の超音波診断装置を使用したため、探触子の重さの問題はない。また、診断と三次元構築を別の行程で行ったため、検査にかかる時間の増加も比較的少なくなると期待される。その一方、三次元超音波装置と比べて画像がやや劣ることは否定できない。実際、図7に示されるように画像を回転した際に、その向きによってはかなりノイズが入ってしまうことがあった。また、得られた画像を別の装置(パーソナルコンピュータ)で処理するため、その場で被検者などに三次元画像を見てもらうことができない。

 しかし、今回行った三次元構築画像の有用性確認アンケートの結果から、非医療従事者でも80%の方は認識が可能であったことで、ある程度の品質は保持されており、直感的に理解しやすいとの結果を得た。このことには一定の意義があると考えられた。

 今回の試みで、スライス間隔の設定や元の二次元画像から必要部分を抽出する処理過程にはある程度の経験が要するとも思われ、今後の課題となりうると考えられた。また、今回の観察対象は動きのないファントムであったが、実際の胎児では運動による三次元構築画像のゆがみ等も問題となりうる。しかし、これらの点は画像抽出や構築上の手技を工夫することによりある程度解決できるものと予想される。

 今後、ソフト面・ハード面における進歩によってさらに良好な三次元画像が得られるようになり、よりよい母児関係育成に寄与しうるものと期待される。

 (本文の一部は第42回日本母性衛生学会学術集会(2001年,大阪)にて発表した)




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